20250321
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:当社の特徴と優位性は、第一に、豊富な鉄人講師・登録講師のネットワークを構築している点にあります。予備校講師は一般的に個人事業主として活動しており、組織に属することが少ない中で、当社は審査を経て認定された鉄人講師と、登録講師からなる広範なネットワークを有しています。この講師陣のネットワークは、他社が容易に模倣できない、当社独自の強みとなっています。
第二に、タイムパフォーマンスを重視した映像授業を提供している点が挙げられます。1コマあたり約5分という短い映像授業を提供することで、生徒が知りたい情報を効率的に学習できる設計となっており、これは、従来の長い映像授業とは異なり、現代の学習ニーズに適応した形式です。
第三に、教育分野に特化した映像制作の専門性と安心感を提供しているという点も、当社の大きな特徴です。映像授業の制作にあたり、教育的な効果を最大限に高めるための専門知識やノウハウを有しており、単なる映像制作会社では実現できない、教育内容の質と効果が保証されています。
これらの特徴が組み合わさることで、質の高い教育コンテンツを効率的に提供することが可能となり、当社の優位性を確立しています。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長戦略のポイントは、ストック性の高いサービスの開発と、新たな教育分野への展開です。具体的には、現在主力である「学びエイドforSchool」および「学びエイドforEnterprise」において、大規模プロジェクトの受注に依存するフロー型の売上から、より安定したストック型の売上基盤を確立することを目指しています。
さらに、社会人向けの学習教材や研修領域、資格試験といった、まだ映像化が進んでいない分野への事業拡大も視野に入れており、これにより、更なる成長を目指します。
Q:業績の増減要因をご説明ください。
A:業績の増減要因といたしましては、主に「学びエイドforEnterprise」と「学びエイドforSchool」のサービスにおけるフロー部分の未確定受注の状況に左右される点が挙げられます。
具体的には、今期数億円規模の新規プロジェクトの受注を見込んでおりましたが、受注開始時期を迎えても話が進まず、結果として受注中止となったことが、業績に大きな影響を与えました。また、大手の学習塾様との商談において、金額交渉が難航したり、受注はできたものの売上が来期に計上されることになったりしたことも、今期の業績に影響を与える要因となりました。
これらの要因が重なり、当初の業績目標の達成が困難になったため、売上高、各段階利益において下方修正を行うこととなりました。
Q:株主還元の方針をご説明ください?
A:株主還元の方針としましては、現時点では、配当等の株主還元策を実施するよりも、事業の成長のための投資を優先する方針です。これは、上場したばかりであり、更なる成長を実現するために、内部留保を充実させ、積極的な投資を行うことが、株主の皆様の利益に繋がると考えているためです。
取材者:
改めて貴社の事業内容とビジネスモデルについて、特徴や強みなども含めてご説明いただけますか?
回答者:
まず、当社の概要を第3四半期の決算説明資料に基づいてご説明いたします。当社のミッションは「教えたいと教わりたいをていねいに紡ぐ」ということで、代表取締役社長の廣政は、元々東進ハイスクールの予備校の講師を務めておりました。その後、東進ハイスクール、河合塾と予備校講師としてのキャリアを積み、学校内予備校を設立しました。学校内予備校につきましては、現在では皆様ご存知の漫画「ドラゴン桜」の題材となっております。「ドラゴン桜」は、1990年代後半に廣政と、現在国民的に人気の予備校講師の二人が、大阪の女子校を再生していくプロジェクトが取材されたものです。
このように、当社は予備校講師の持つ力や予備校講師のネットワークを背景に、事業を展開してまいりました。廣政はこの学校内予備校というビジネスモデルに将来性を感じ、起業家として学校内予備校をスタートさせました。学校内予備校は成功し、その後、後進に譲り、廣政自身は、東進ハイスクールで映像授業を担当していた経験から、遠隔教育の分野で「学びエイド」という会社を立ち上げたというのが背景になります。
「教えたいと教わりたいをていねいに紡ぐ」というミッションは、予備校の先生方、我々がここに記載しております「鉄人講師」と呼んでいる講師の方々のネットワークと、生徒さんや塾の先生方、教材など「教わりたい」方々をつなぐプラットフォームになる、という意味を表しています。我々は、日本中のあらゆる「教えたい」という気持ちと「教わりたい」という気持ちを結びつけることを目指しています。
各サービスについてですが、学習塾向け、教育関連事業者向け、一般の会員向け、いわゆるプレミアム会員向けとありまして、この学習塾向けと教育関連事業者向けの「学びエイドマスター」「学びエイドマスターforSchool」「学びエイドforEnterprise」で売上の9割以上を占めています。個人会員と直営学習塾は、様々な社会的な意義、誰でも学びたいと思う人に提供するという理念に基づいて行っている事業ですので、メインとなるのはこの3サービスです。
当社の強みについてご説明します。1点目は、先ほど申し上げた豊富な鉄人講師や登録講師のネットワークです。一般的に、予備校の先生方は、どこかに属しているということはなく、基本的には個人事業主です。予備校の先生同士のつながりはもちろんありますが、基本的にはプラットフォームに属しているとか、直接雇用しているということはほとんどなく、それらの講師をネットワークとして持っているというのは、簡単そうに思われるかもしれませんが、実は難しいことです。当社が持っている登録講師というのは、鉄人講師は当社が審査の上で認定した講師のみがなれるため、これからキャリアを積んでいく先生方も登録講師という形でネットワークしているというのが、当社の強みの一つです。
2点目は、タイムパフォーマンスを重視した映像授業です。当社の映像授業の特徴として、1コマ約5分で顔の出ない映像授業であるという点があります。今までの映像授業は、45分~60分、あるいはスタディサプリでも15分という長さでした。スタディサプリは元々60分で作っていたものを、あとから分割して10分や15分にしているのだと思いますが、我々は2015年の創業時から、60分や45分の映像授業は学生が見ない、寝てしまうという考えがありました。知りたいところを電子辞書的に、例えば仮定法過去完了が分からなければ、仮定法過去完了の解説だけが3分や5分で行われるというものが生徒には必要であると考え、そのような映像授業を作ってきました。当時は、YouTubeにもほとんどそういうものがありませんでした。現在、約6万本の映像授業を配信しており、制作実績としては7万本以上の映像授業を作ってきているという点から言いますと、おそらく国内では最大量を作っているのではないかと自負しております。
3点目は、教育分野に特化した映像制作による専門性と安心感の提供です。我々の映像は、映像制作会社であればどこでも作れるのではないか、あるいはシステム開発もシステムが分かっていればどこの会社でもできるのではないかと思われがちですが、当然教育分野になりますと、例えば中学校1年生向けに解説する場合、うっかり中学3年生で習うようなことを前提にしてしまうなど、専門的な知識やノウハウが必要です。また、講師が無駄話のように話している内容にも、実は教育的な効果があり、そこを削ってはいけない必要な要素である場合もあります。我々の方では、編集一つにしても、なぜ先生がここでこういうことを言っているのか、あえてこういう言い方をしているのか、あるいは使ってはいけない言葉を使っているので対象学年とずれているから言葉を変えてほしいなど、教育効果を最大限に高めるためのノウハウを持っています。これらの強みが全て揃っているというのが、当社の強みであると考えております。
サービスごとのビジネスモデルについて、もう少し踏み込んでご説明させていただきます。
先ほどの「学びエイドマスター」、それから「学びエイドマスターforSchool」「学びエイドforEnterprise」の3つがメインとなるビジネスモデルですので、この3つに絞ってお話させていただきます。「学びエイドマスター」は、創業当初からのサービスで、個人や中堅規模の学習塾、例えば、塾長先生がお一人で運営されているような塾を対象に、映像授業と管理機能の提供を行っています。
当社のビジネスモデルの一つの特徴として、これまでの映像授業の会社さんや、東進ハイスクール、リクルートなどと異なる点は、映像制作の部分にあります。サービスを作ってSaaSの月額基本料と生徒のID数に応じた課金費用で売上を上げるという点は、他社と同様ですが、従来の映像授業は、例えば先生に1本あたり1万円や2万円で作ってくださいと依頼し、全科目全レベルの映像を作ると、莫大な金額になっていました。大きな資本を持っている会社は作ることができますが、当然そこにかけた投資を回収しなければならないので、高い費用で生徒に販売する必要がありました。
我々はそこを改善し、鉄人の先生方には、映像授業の著作権を持ったまま提供していただくという形にしました。つまり、先生方に1本いくらでお願いしますという形で依頼する場合は、当然著作権も含めて映像授業の会社が著作権を持つわけですが、我々は先生方に持ったままにしておいていただき、先生のものだから先生に作っていただき、それを先生の実費で我々に使用許諾という形で貸していただくという形にして、使用許諾料という形で著作権料、本の印税のような形で先生方にコンテンツの使用許諾料の支払いを行っています。これは「学びエイドマスター」などで先生方が作ってくださった映像授業を使って売り上げた売り上げの5%を原資にして、現在100名近い鉄人講師の方々に、提供本数に応じて、例えば英語5,000本の先生がいれば、数学で2,000本の先生もいるというように、提供本数に応じてレベニューシェアで支払うという形になっています。
我々からすると、仕入れが売り上げの5%で抑えられているということで、先生方からすると最初は手弁当で作るので本書くのと同様に大変ですが、一生懸命作って納めて我々が成長するように応援すればするほど自分たちに入ってくる原資が増えていくわけです。我々が5億円の時よりも50億円の時の方が手元に入る金額が多いので、我々のサービスが良くなるように自然と応援してくださるということが「学びエイドマスター」を作った時の一つの特徴であると考えております。
続きまして、「学びエイドマスターforSchool」についてご説明します。「学びエイドマスターforSchool」は、元々「学びエイドマスター」という商品があり、小規模な塾に導入していただきました。その後、700教室ありますとか、1,000教室ありますとかいう塾様からも「学びエイドマスター」を使いたいというお話をいただくようになりました。元々塾長と教室長と先生が同じであるような1教室で使っていくものをベースにして設計しているサービスだったので、大手の学習塾様などになると、そのままでは使えないわけです。
大手学習塾様のシステムに合うように改修をしたり、自分たちのカリキュラムに沿った映像授業以外は見えないようにしてほしいといったカスタマイズの要望を受けるようになりました。「学びエイドマスター」をベースに、大手の学習塾様の場合は年間契約になり、先ほど申し上げたシステムと連動するように連携してほしいとか、改修してほしいとか、あるいは「学びエイドマスター」の映像授業を使うけれども、自社でもオリジナルで映像授業を作りたいからそれを作ってほしいといった様々な要望を学習塾様からいただくというストックとフローの両方が発生するのが「学びエイドマスターforSchool」です。
取材者:
ちなみに、大手の塾向けにその映像授業を作ったものに関しても、他のところで見ることができますか?
回答者:
いいえ、見ることができません。各企業様のオリジナルコンテンツとして納品しますので、他社様が使用することはありません。
回答者:
最後に、「学びエイドforEnterprise」というサービスについてご説明します。「学びエイドforEnterprise」は、少し広い意味合いで捉えていますが、教育関連事業者様向けに、最も多いのは教育系の出版社様です。参考書の会社様、ここに記載させていただいております三省堂様、受験研究社様、旺文社様のような市販教材の教材会社様から、啓林館様のような教科書会社などあらゆる教材会社に、映像授業制作や執筆のお手伝いしています。
これは、ある会社様から、多くの映像を作っている当社に、制作を依頼されたことがきっかけで、作ってみたら非常に良かったということで、他の会社様からも制作してほしいというご要望をいただくようになり、サービス化しました。出版社様から例えばテキストに映像授業をつけたいというご要望をいただくと、我々は紙面をPDFなどのデータでお預かりをして、先ほど申し上げた鉄人講師や、登録講師に、1本単位で委託をし、制作します。我々編集、校正校閲を行って、出版社様の方に納品していくという商流になります。
「学びエイドforEnterprise」は、LMSなどを開発して、その保守的なものや、映像授業をサービスの一部として例えば1,000本2,000本借りたいというストックの売上も一部ありますが、主にはフローの売上が中心になっているというのが「学びエイドforEnterprise」というサービスです。
取材者:
基本的に貴社のサービスというのは、教育事業者であったり、塾などに学びのコンテンツを提供して、それを塾の方で例えば学習のサポートなどで活用するようなイメージですか?
回答者:
塾にとってはほぼ教材だと思います。
取材者:
教材というのは、それを見て、先生がどのように授業をするかのような教材ですか?
回答者:
使われるシーンという意味でいうと、例えば一気に全部、1コマ5分から10分で終わるので、今日はここからここまでの内容を全て見て、我々確認テストなどの教材も用意しているので、それを解いてインプットしましょうという使い方をするところもあれば、予習や復習として、来週はここの部分をやるから映像授業を見て予習してきてねとか、あるいは欠席した生徒さんに、今日の範囲はこういう内容だったので、そこを勉強して復習して追いついてきてねというように、様々な方法で映像授業は活用されています。
取材者:
塾によって教え方の方針などが異なる場合もあるかと思いますが、貴社にとっては、多くの鉄人講師がいる中で、各単元でも何種類かの講師が教えていて、1つの単元に何本かの動画があるようなイメージですか?
回答者:
おっしゃる通りです。これまでの映像授業は、制作に多額の投資を要するためバリエーションや好みなどを考慮することが難しかったり、あるいはよく使われるものやよく見られる科目しか対応できなかったりしますが、我々の場合は、地学や倫理など、本来映像授業で揃えることが難しい科目も映像授業になっているという意味では、網羅性が高いという点が他社よりもあると思います。
取材者:
映像コンテンツ使用料の支払いについてもう少しお聞きしたいのですが、特定の講師の授業が非常に人気だからといって、その利用料が上がるということはないのですか?
回答者:
あくまでも提供本数に応じてレベニューシェアにしています。その理由は、例えばYouTubeのように再生回数にしてしまうと、教育の場合、英語や数学は圧倒的に視聴数が多く選択科目の重要性が下がってしまいます。我々は選択科目も含めてすべて揃っているというところに意義があると思っているので、年に数回しか再生されないかもしれないし、受験者数も全国で数百人しかいないかもしれない科目でもサービス全体の価値を上げていると考えています。そのため、人気かどうかではなく、あくまで提供本数で分配することにしています。
取材者:
私が以前駿台予備校に通っていたのですが、駿台の教師の方は授業中に雑談をされる方も多かったように思います。予備校の先生、特に有名な方は、予備校から高額な報酬で引き抜かれているというイメージがあるのですが、貴社の鉄人講師の方は、どのように集められているのですか?
回答者:
鉄人講師からのご紹介が多いです。「この先生は授業が素晴らしいから、学びエイドで審査してみてほしい」というようにご紹介いただきます。
予備校講師の方は、プライドをもってプロフェッショナルとして仕事をされています。報酬も大切な指標でありますが、それ以上に我々の理念に共感していただいていると考えています。
予備校の先生方も、少子化や浪人生が減ってきている中で教える場が減りつつあるという現実があります。そのような中で、我々のプラットフォームは、例えば「学びエイドforEnterprise」や、我々の映像授業を見た出版社から本の執筆の依頼が来たりと、リクルート的な場所にもなっています。先生方も、世の中の生徒さんのためにという大義名分はもちろんありますが、それ以上に我々と一緒に仕事をすることのメリットを十分に理解してくださっていると思います。
回答者:
予備校講師という特殊な職業について、ご理解いただけましたでしょうか?
取材者:
いえ、興味深いです。予備校の先生は個性的な方が多いですよね。
回答者:
予備校講師は人気商売的な特性もありますので、特に昔の先生は金ピカ先生はじめ著名な先生は個性的でしたので、個性的な先生が多いと思われているかもしれません。
取材者:
そのようなお話を聞いていると、予備校の授業料は決して安くはないので、経済的な理由で教育格差が生じているという問題意識が、貴社の理念にもあるのかと感じたのですが、いかがですか?
回答者:
理念のところに書かせていただきましたが、教育の機会の均等という言葉は、厳密には正しくないと考えています。学校や図書館が存在するという意味において、教育の機会は平等に与えられているからです。しかし、教育に対する意欲という点では、格差があると考えています。例えば、東京などの首都圏は教育熱心ですが、鹿児島県では、女性の大学進学率がまだ50%に達していません。鹿児島にいる女性が能力的に劣っているということではありません。教育に対する意欲という点で格差があるためだと考えています。
我々のサービスは、学習塾に通うためにその土地にいなければならないということなく、全国どこからでも、世界からでも質の高い授業を受けられるという点で、教育意欲の格差の解消に貢献できると考えています。良い先生の授業を受けることで、英語が好きになったり、数学が好きになったりすることはよくあります。そのような機会を多くの方に提供したいというのが、我々の考えです。
取材者:
貴社のサービスは、スタディサプリさんのように、個人で契約して、塾に入っていなくても、サービスを利用することができますか?
回答者:
個人会員向けのプレミアム会員というサービスがあります。1日3講座まで無料で視聴いただけるので、今年年始にニチガクという予備校が閉校になった際には、ニチガクの生徒さんに我々の映像授業を提供するなどの対応も行いました。このように、誰でも見ることができる体制は整えています。
取材者:
個人会員向けにサービス提供を強化することはないのですか?
回答者:
元々、BtoCでサービスを始めるか、BtoBtoCにするかで悩んだ部分がありました。BtoCでやるということは、スタディサプリさんのような広告戦略に対抗しなければならないということなので、それは難しいと考えました。
教育系のBtoCサービスは、ストック型のモデルだと思われがちですが、実はストックしにくいという問題もあります。高校3年生が受験を終えるとサービスを解約してしまうため、ライフタイムバリューは1年あるかないかです。12月から1月、2月にかけて申し込む方が多いため、毎年新規会員を獲得していかなければならないサービスになってしまうという点も考慮し、スタートアップには厳しいと考え、BtoBのサービスを中心に展開しています。
取材者:
映像授業について、雑談の部分が難しいのではないかと考えています。予備校の授業の面白さは、先生の雑談にも必要な要素が含まれている点にあると思うのですが、映像授業を提供している会社として、どのように考えていらっしゃいますか?
回答者:
良いご質問です。60分や90分の授業で学生を惹きつけるためには、雑談が必要です。予備校のビジネスモデルは、授業を「神授業」にして、例えば林修先生であれば林修先生のファンにするわけです。生徒に「林修先生の授業は全部受けたい」と思わせて、どんどん授業を取らせる従量課金制のビジネスモデルなので、生徒を飽きさせないエンターテイメント性の高い授業を行う必要があります。
雑談には、学びの楽しさを理解させたり、授業後も勉強のモチベーションを維持させたりする効果があります。
一方で、我々の授業にはエンターテイメント性はなく、本当に知りたいところをGoogleマップで行き先を調べるように、最短距離で情報が得られるように作られています。BtoCのビジネスモデルにしなかった理由の一つは、我々の授業が60分や90分のエンターテイメント性の高い授業と比較すると、面白みに欠けるという点です。
そのため、学習塾の先生に、映像授業を見た後の生徒のモチベーション維持をお願いしています。先生方には、情緒的な価値を提供していただいています。我々は、分かりやすさや、すぐに知りたい情報が得られるという点に特化しており、BtoBtoCという形態をとることで、これらの強みを最大限に活かしています。
取材者:
業績についてお伺いします。先ほど業績の下方修正を発表されましたが、要因について詳しく教えていただけますか?
回答者:
第3四半期の決算説明資料でもご説明している通り、多大なご迷惑を投資家の皆様、個人の株主の皆様におかけしてしまい、大変申し訳ございません。要因としては、学びエイドforEnterpriseと学びエイドforSchoolのサービスにおけるフローの部分の未確定の受注で、いくつかの事象が重なってしまったことが挙げられます。
一つは、新規受注の計画未達です。今期数億円規模のプロジェクトを受注する予定でしたが、受注開始時期になっても話が進まず、秋頃に先方から中止の連絡がありました。昨年の売上が6億円程度の会社ですので、1億円以上のプロジェクトがなくなると、かなりリカバリーが厳しい状況になります。
大手の学習塾様などと商談を進め、ある程度の受注見通しが立ったため、当初の目標である7.7億円には届かないものの、それに近い金額で着地できると考えておりましたが、大手の企業様との取引では、金額交渉が難航したり、受注はできたものの売上が来期に計上されることになったりするなど、全てを今期の売上に組み込むことができませんでした。
上場したばかりで多くの方にご期待いただいている中で、申し訳ない結果となってしまいましたが、今期は使うべき費用や投資を行い、来期良いスタートが切れるようにという形で、売上高、各段階利益において下方修正を行うことといたしました。
取材者:
今後の取り組みの中で、そのようなずれが生じないようにするための対策などはございますか?
回答者:
学びエイドforEnterpriseのサービスもforSchoolのサービスも、「学びエイドマスター」以外の2つのサービスは、成長のドライバーになっているのが、大手の学習塾様との大規模なプロジェクトです。それがうまくいかないと、今回のような事態になってしまうため、forSchoolにおいても学びエイドforEnterpriseにおいても、ストック性の高いサービスを開発し、中長期的な目線で売上の基盤を強化していくことが必要であると考えています。
取材者:
昨年上場されたとのことですが、上場の目的について教えていただけますか?
回答者:
教育業界は保守的な業界で、特に出版社様などは新規の取引先に慎重な企業様が多いため、これまで商談に行ってもなかなか取引に至らないことが多くありました。しかし、上場後、大手企業様から「ぜひ一緒にやりましょう」というお話をいただけるようになりました。上場企業になったことで、社会的な信用、業界内での信用を得ることができたのは大きかったと感じています。
取材者:
今後の株主還元策について、方針などございましたら教えていただけますか?
回答者:
しばらくは自社の成長のために投資に回していきたいと考えています。
取材者:
貴社の鉄人講師の一覧を拝見すると、数学や国語以外の講師の方もいらっしゃるようですが、今後、社会人向けの学習教材などを提供していく構想はございますか?
回答者:
成長戦略の中にも盛り込んでおります。社会人になっても学ぶことはたくさんあると考えており、研修領域や療育など、まだまだ映像化できていない部分があると思いますので、そういった分野にも展開していきたいと考えています。
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ビジネスモデルや事業内容
学びエイドは、「教えたいと教わりたいをていねいに紡ぐ」をミッションに、予備校講師のネットワークを背景とした教育プラットフォームの運営が事業内容である。主なサービスとして、学習塾向け、教育関連事業者向け、一般会員向けの映像授業と管理機能の提供を行い、売上の9割以上を学習塾・教育関連事業者向けサービスが占める。
創業の経緯と転機となった出来事
代表取締役社長の廣政氏は、予備校講師としてのキャリアの後、学校内予備校を設立。この学校内予備校は、廣政氏と現代文の予備校講師が大阪の女子校を再生するプロジェクトが題材となった漫画「ドラゴン桜」のモデルとなる。廣政氏は学校内予備校というビジネスモデルに将来性を感じて起業に至る。その後、東進ハイスクールで映像授業を担当した経験から、遠隔教育分野での「学びエイド」設立が、現在の事業の始まりである。
特徴や強み
強みとして、第一に、豊富な鉄人講師・登録講師のネットワークを持つ点が挙げられる。予備校講師の多くが個人事業主として活動する中で、同社は独自の講師ネットワークを構築している。第二に、タイムパフォーマンスを重視した1コマ約5分の映像授業を提供し、効率的な学習を可能にしている。第三に、教育分野に特化した映像制作による専門性と安心感の提供も強みである。
成長戦略
成長戦略のポイントは、ストック性の高いサービスの開発と、新たな教育分野への展開である。具体的には、学習塾・教育関連事業者向けサービスにおけるストック型売上基盤の強化、社会人向け学習教材や研修領域、療育分野への事業拡大を目指す。
直近の決算状況
直近の業績として、学びエイドforEnterpriseと学びエイドforSchoolのサービスにおけるフロー部分の未確定受注が要因で、業績の下方修正を行うこととなった。新規受注の計画未達や、大手の学習塾との商談における売上計上時期のずれ込みなどが影響している。
上場の目的
上場の目的は、教育業界における信用獲得である。特に、保守的な企業が多い学習塾や教育出版社との取引において、上場企業としての信用が取引を円滑にする上で重要である。
株主還元策
株主還元策については、当面は事業成長のための投資を優先する方針である。
取締役管理部長兼総務課長 杉浦久恵様
・資料
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